都会では救急病院が1次2次3次とランク付けされていて、救急隊員は傷病者の重症度に応じてそれぞれに振り分けている。 2次輪番という言葉も この状況に即して意味をもつ。
その3次施設の配置というのは、人口比で考えられているようだが、僻地においては無意味となる。例えば当院は2次施設に分類されるが、行政のいう輪番を組む2次施設というのは30kmの彼方、行政の枠組みでの3次施設は80kmの彼方だ。重症であれば、搬送途中に死んでしまう。
しかし、周囲人口1万人程度の当院に3次施設並みの設備を備えるのは、あまりにコストがかかりすぎる。
ここに、僻地特有の救急格差が発生する。
とにかく 当地では、都会なら3次施設相応の重症外傷でも当院に運び込まれてくる。そこで、当院で根本治療が無理なら、とにかく根本治療はいいから生かすだけの強力なサポートをして、少しでも状態をよくして、3次施設まで運び込むというだけの治療をしようと考えた。なにもしないで時間の無駄だといって門前払いをすると、搬送途中に死んでしまう。
とにかく呼吸させて、心臓を動かして、血の量をふやしながら送るのだ。見た目が派手な枝葉末節にとらわれていて心臓が止まってしまってはなにもならない。なんとか生きて3次施設までたどりつけたら、結果はともかく、この僻地の人でも都会と変わらない救急医療を受けさせることができるのだ。それは当直が外科医でなくてもできるはずだ。
そこで、日本救急医学会と外傷学会がまとめた外傷初期診療ガイドライン(JATEC)を参考に、当院の実情にあわせたガイドラインをこしらえた。JATECの講習会は大変に競争率が高いからだ。救急指令所からの第一報で高エネルギー事故らしいということが伝われば、その時点で当院の事務を含めた全スタッフが動き出す。
このガイドラインを決めてから、即死を除けば 当院内での外傷死が0となっていることが判明した。当院で根治治療できた例も多かったが、当院で無理な場合でも、処置の結果、当院到着時に心臓が動いていた全例で生きて3次施設にたどりつけている。
県から、臨床研修の協力施設に追加させてほしいといわれたので、研修医向けのプログラムにも高らかにそのことをうたった。
さて・・・競争率が高いJATEC講習会(コンピュータ制御された重症外傷設定のダミー人形を適切かつ迅速な診断処置によって死から救う実習。2日間にわたる)だが、いつも大都会でおこなわれるのになんと岐阜で開かれ、全国で32人の受講枠に当選してしまった。
なんでも、最後に試験があるらしい。当院のガイドラインの制定者である私は、大変にプレッシャーを覚えた。なんとなれば、既に自分の蘇生スタイルをもってしまっている医師ほど、JATECから逸脱して成績が悪い事を聞かされていたからだ。たしかにそう思う。試験におちたら、私が教えることになっている研修医向けのプログラムをなんとしよう・・・。
そもそも、私にはJATECを習得して、ガイドラインをさらに強化して僻地救急格差を少しでも少なくする使命があるのだ・・・。
ううう・・・とってもとってもプレッシャー・・・・。
・・・・
私があたったのは 恐らくは脳損傷で意識状態が悪いけど吸引で気道のゼロゼロは解決したが、フレイルチェストで呼吸状態悪く、そこで気管内挿管して人工呼吸管理にして生命危機解決し、腹腔内を検索しているうちに今度は緊張性気胸となり再び生命危機となり、すばやく脱気してさらにトロッカーいれて生命危機解決し・・・・
と、いう三重苦の想定であったが、なんとか迫り来る死から救うことができた・・・けれども、ここまではある程度「素」でやっている。
ガイドラインだから、所々で総括しなければならない。頭部CTに向かう前に生理学的評価に対して総括した。
「えっとA(気道の異常)については・・・・
・・・・あれ?・・・・良くなったはずなのに挿管されてる!!! あたしゃなに思って挿管したんだっけ?」
真顔で試験官に聞いてしまった。
うう・・・救急医に意識障害があるとは、これはこまった。これが年配者が落ちやすい本当の理由であったか・・・orz
結果発表される前に
全員受講証渡されて帰されてしまった・・・・結果が心配だ。
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