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広尾病院の名誉回復を!!!

もう、一月以上前の事になる。1月18日に昭和大学で開催された医療事故調に関するシンポジウムを拝聴した。

 そこで田邊 昇先生の広尾病院事件の経過についてのスライドに衝撃をうけた。恥を忍んで書き留めておきたい。

 広尾病院事件とは、もちろん看護師によるヒビテン誤注射により患者さんが亡くなられた誠に痛ましい事件を指すが、自分は医療事故に興味があるような事を言いながら、当時のマスコミ報道を鵜呑みにして 

「広尾病院事件には隠蔽があり、警察の関与があってそれが明らかになった」

と信じ切っていた。こんな病院があったから刑事が医療訴訟にもちだされるようになったのだと・・・信じていたのだ。

 この民事訴訟の判決文をしっかり読んだ方々には噴飯物の話であろうと推察し、穴があったら入りたい気分だが、結構 このような医者は多いのではないか。

  田邊先生のスライドとご説明によれば、広尾病院側は 患者さんが亡くなった1日後には、看護師が薬を間違えて投与した事故である可能性があるとご遺族側に説明して、病理解剖を薦めている。 そして病理解剖の結果がヒビテンによる急性肺塞栓症であった可能性が90%程度との病理診断結果であることも伝えている。これらは刑事事件化する前のことであるという。

 ただし 生命保険金請求の書類に急性肺塞栓症と記載され、病死に〇が付けられていたとのことであるが、保険金が出やすくする方便であった可能性があり、しかもそれには裁判に判決触れられていないとのこと・・・

民事裁判での確定判決文はweb上で公開されている。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/589/005589_hanrei.pdf#search='%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%91%EF%BC%92%E5%B9%B4%EF%BC%88%E3%83%AF%EF%BC%89%E7%AC%AC%EF%BC%91%EF%BC%99%EF%BC%96%EF%BC%99%EF%BC%91%E5%8F%B7%E6%90%8D%E5%AE%B3%E8%B3%A0%E5%84%9F%E8%AB%8B%E6%B1%82%E4%BA%8B%E4%BB%B6+%E5%88%A4%E6%B1%BA'

全36ページ 最初は原告被告の主張が記載されているだけで、19ページからの第3と記された中立の立場からの裁判所の判断から読むとよいだろう。

 皆が口裏を合わせて隠蔽して、それを刑事が白状させたなどというイメージとは程遠い話だ。

 もしも、そのようなイメージが広がっているとするならば、それは事実とは違うのだから、この部分については名誉は回復されてしかるべきだ。

 この事件の真相が遺族に伝えられた事と刑事事件化とはどうも関係なかったようだ。勿論、亡くなられた方やご遺族には なんの落ち度もなく、まことに気の毒な事件であったことは明らかだ。もしも、刑事を持ち出されたのが、単に懲罰感情からであったとしても、それはご遺族の権利なのだから是非もないことだ。
 もしかしたら、関係者の刑事上の厳罰が再発防止になると本気で信じていての行動だったのかもしれない。しかし、残念ながらそれは無理だ。どれだけ事故の当事者を厳罰化しても、ヒューマンエラーは科学的にもなくなることはないからだ。誰しもやりたくてエラーをおこすわけではない。 

 何度も記載したことだが、かつて笑気と酸素の繋ぎ間違えによる麻酔事故は、どれだけ注意してもなくなることはなかったが、物理的に笑気の配管に酸素をつなぐことができない規格にしたら、この手の事故はなくなった(唯一発生したのは天井裏での配管工事ミスでのことだ)。

 もはや論をまたない常識であるが、ヒューマンエラーをなくするためには、できればこのような、物理的な、それができないのならシステム的な取り組みが必要だ。

 複雑で煩雑な医療現場だ。刑事罰による事故当事者個人に対する厳罰は、むしろ現場の逃散による人員不足による事故リスクの増大や、現場の萎縮から、やりようによっては助けられるかもしれない患者が、そのリスクのある医療をうけないことによる自然経過による死を厳しい説明により選ばされているかもしれないという、一般の目には見えない医療崩壊を招いてしまった可能性がある。

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